監修医師
志村 一馬 医師
川越下肢静脈瘤膝関節クリニック 院長
当クリニックでは傷跡が目立ちにくい治療方法である、血管内焼灼術を健康保険適用でお受けいただくことができます。お気軽にご相談ください。
下肢静脈瘤に対して使用される医療用の着圧ソックス(弾性ストッキング)は、適切に使用することで、足のむくみやだるさなどの症状緩和に用いられる治療法のひとつです。
一方で、症状や基礎疾患によっては使用に適さない場合もあるため、医療機関での評価を踏まえたうえで正しく理解することが重要です。
この記事では、医療用着圧ソックス(弾性ストッキング)の基本的な仕組みや、下肢静脈瘤における使用目的、正しい使い方、注意点について解説します。
医療用着圧ソックス(弾性ストッキング)とは?
医療用着圧ソックス(弾性ストッキング)は特殊な編み方をしており、足首からふくらはぎ部分を圧迫することを目的としたソックスです。
一般的なストッキングよりも頑丈に作られており、足のむくみの改善や下肢静脈瘤の治療などに用いられています。
基本的には立ち仕事やデスクワークなどで、足が心臓より下にある日中の着用が推奨されています。
医療用の着圧ソックスは足首部分の圧迫がもっとも強く、足首から上に向かって徐々に圧迫圧が弱くなる構造をしています。
これによりふくらはぎの筋肉をほどよく圧迫して、足の静脈の血液が下から上に流れやすくサポートしてくれるのが特徴です。
医療用着圧ソックスと市販のストッキングの違い
弾性ストッキングは大きく分けて医療用と市販品があります。
医療用着圧ソックスは医療機器に該当し、「弱圧」「中圧」「強圧」の三段階から該当する症状や病気に合わせて選択します。
下肢静脈瘤に対しては「弱圧」「中圧」が選択されます。
一方、市販の弾性ストッキングは、軽度のむくみや疲労軽減が目的です。ドラッグストアやネットショップでも購入が可能ですが、治療目的で使用するものではありません。
あくまでも日々の疲れをサポートしてくれるアイテムとして利用しましょう。
医療用着圧ソックスは、サイズ選択も重要です。
緩すぎると適切な圧迫ができないため、本来の効果が得られない可能性があります。
下肢静脈瘤などの症状が気になるときは、専門の医療機関を受診して、医師の指示のもと、弾性ストッキングを使用しましょう。
下肢静脈瘤に医療用弾性ストッキングが用いられる3つの理由
下肢静脈瘤は、ふくらはぎなどの静脈にある弁の機能が低下することで血液が逆流し、むくみやだるさ、痛みなどの症状が生じる疾患です。
こうした症状の緩和や進行の抑制を目的として、弾性ストッキングによる圧迫療法が用いられることがあります。
ここでは、下肢静脈瘤に対して弾性ストッキングが用いられる主な理由を解説します。
1.日常生活での足のつらさをやわらげる
弾性ストッキングは、適度な圧迫によって下肢の血流をサポートし、むくみやだるさ、痛みなどの症状緩和に用いられます。
特に、長時間の立位や座位が続く場合は、夕方にかけて症状が出やすくなるため、日中の着用が検討されます。
2.症状の悪化を抑える目的で用いられる
弾性ストッキングは、血液のうっ滞を軽減することで、症状の悪化を抑える目的で使用されるケースがあります。
ただし、あくまで保存療法のひとつであり、下肢静脈瘤そのものを治す治療ではありません。
症状や血管の状態によっては、血管内焼灼術などの治療が検討されます。
3.手術後の圧迫療法として用いられる
血管内焼灼術や硬化療法などの治療後には、術後の痛みや内出血の軽減、血栓予防などを目的として、弾性ストッキングによる圧迫療法が行われることがあります。
着用期間や圧迫圧は、治療内容や患者さんの状態によって異なるため、医師の指示に従って使用することが重要です。
弾性ストッキングの履き方と着用時のポイント
医療用の弾性ストッキングは、膝下・膝上・パンティストッキングタイプなど、症状や目的に応じて種類が異なります。
そのため、医師の指示に基づき、自身の状態に合ったものを選択することが重要です。
弾性ストッキングは、圧迫圧があるため通常のストッキングよりも履きにくく感じることがあります。
ただし、履きやすさだけでサイズの適否を判断することはできません。適切な圧迫を得るためには、サイズ選択や正しい着用方法が重要となります。
ここでは、弾性ストッキングの基本的な履き方と着用時のポイントを解説します。
弾性ストッキングの履き方
通常どおりの方法で着用できる場合は問題ありませんが、履きにくいと感じる場合は、以下の手順で行うとスムーズです。
ストッキングに手を入れ、かかと部分を内側からつまんで裏返す
前後を確認して足先を入れ、つま先からかかとまで位置を合わせる
かかとまで履けたら、足首までたくし上げる
生地を広げながら、シワができないように足首からふくらはぎにかけて均一に引き上げる
弾性ストッキングが履きにくいときの工夫
弾性ストッキングは圧迫圧があるため、着用に力が必要となる場合が多いです。履きにくいときは、以下の方法を取り入れることで着用しやすくなることがあります。
ゴム手袋を使用して滑りにくくする
補助用のストッキングを重ねて滑りをよくする
専用の着用補助具を使用する
弾性ストッキングを履くときの注意点
弾性ストッキングを着用する際は、以下の点に注意が必要です。
たるみやシワができないように均一に整える
折り返して着用しない(局所的に圧が強くかかるため)
皮膚トラブル(かゆみ・かぶれなど)がある場合は医療機関に相談する
加工や切断は行わない
医師の指示に従って使用する
折り返しやシワがあると局所的に圧が強くかかり、痛みや血流への影響につながる可能性があります。
着用後は、圧が均一にかかっているかを確認することが大切です。
下肢静脈瘤における弾性ストッキングの禁忌・注意が必要なケース
状態によっては、弾性ストッキングの使用が適さない場合や、慎重な判断が必要なケースがあります。以下のケースに該当する場合は、必ず医師に相談しましょう。
動脈血行障害がある場合
閉塞性動脈硬化症などの動脈血行障害がある場合、圧迫によって動脈血流がさらに低下するリスクがあります。
弾性ストッキングは静脈の流れをサポートする治療ですが、動脈の血流が十分でない状態での使用は適しません。
弾性ストッキングなどを使用する圧迫療法が適用を判断する指標に「ABI(足関節上腕血圧比)」や「足関節圧」があり、下肢静脈瘤で弾性ストッキングを使用する際に、これらの検査を行う場合があります。
「足が冷たい」「安静時でも痛む」など、動脈系の疾患が疑われる症状がある場合は、医師の診察を受けましょう。
急性期の炎症・感染・血栓性疾患がある場合
蜂窩織炎や皮膚感染症、血栓性静脈炎、深部静脈血栓症など、炎症や血栓がみられる場合は、弾性ストッキングの使用について慎重な判断が必要です。
患部を圧迫することで、痛みや腫れが強くなったり、炎症が悪化する可能性があるため、これらの状態では、使用の可否やタイミングを医師が判断します。
特に深部静脈血栓症の急性期では、抗凝固療法の状況などを踏まえた個別の判断が必要となります。
症状の経過に応じて、医師の判断のもとで弾性ストッキングの使用が検討されるケースがあります。
そのため、これらの疾患が疑われるケースや診断を受けている場合は、自己判断で使用せず、必ず医師の指示に従うことが重要です。
全身状態(心不全・糖尿病など)による注意
心不全や糖尿病などの全身状態によっては、弾性ストッキングの使用について、慎重な判断が必要となります。
例えば、心不全の状態によっては、下肢から心臓への血流増加が、循環動態に影響を与える可能性があります。
また、糖尿病では末梢血行障害や神経障害により、圧迫による皮膚トラブルや異常に気付きにくいことがあるため、注意が必要です。
このような背景がある場合には、圧迫圧の強さやサイズ、着用時間などを含めて医師が個別に判断します。
自己判断での使用は避け、必ず医師の指示に従うことが重要です。
医療用着圧ソックス使用中に起こりうるトラブルと対処法
医療用の弾性ストッキングは、適切に使用することで下肢静脈瘤の症状緩和に用いられますが、圧迫により皮膚や神経、血流に影響が生じる場合があります。
ここでは、使用中にみられる主なトラブルと対処の考え方について解説します。
皮膚トラブル・神経症状・圧迫による循環への影響
弾性ストッキングの使用中には、以下のようなトラブルがみられることがあります。
皮膚トラブル
長時間の着用や素材が合わない場合、かゆみ・かぶれ・発赤などの皮膚症状がみられることがあります。
サイズ不適合やシワ、折り返しによる、局所的な圧迫も原因となる可能性があります。
神経症状
膝下や足首周囲に過度な圧迫がかかることで、しびれや違和感などが生じる場合があります。
サイズや着用方法が適切でないときに、みられることがあります。
圧迫による循環への影響
ストッキングによる過度な圧迫やズレ、食い込みがあると、血流に影響が生じ、冷感や皮膚の色調変化などがみられることがあります。
いずれも頻繁に起こるものではありませんが、違和感がある場合は無理に使用を続けず、医師に相談することが重要です。
異常を感じた場合に受診を検討する目安
弾性ストッキングの使用中に、以下のような症状がみられる場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
強い痛みやしびれが出現、または持続する
皮膚の赤みやただれ、潰瘍などが改善しない
足の冷感や色調変化など、血流低下が疑われる症状
むくみや腫れがかえって強くなる
これらの症状がある、違和感が続く場合は、自己判断で使用を継続せず、医療機関への相談が必要です。
医療用着圧ソックスは「自己判断」ではなく医師評価が重要
医療用の弾性ストッキングは、市販品とは異なり圧迫圧が管理された医療機器であり、使用にあたっては、個々の状態に応じた判断が求められます。
そのため、症状や血管の状態、基礎疾患によっては着用が適さないケースもあり、自己判断での使用は推奨されません。
症状・血管状態・基礎疾患によって適否は異なる
弾性ストッキングの適否は、以下のような要素によって異なります。
下肢静脈瘤の症状の程度(むくみ・だるさ・痛みなど)
静脈の逆流の有無や血管の状態
動脈疾患、心不全、糖尿病などの基礎疾患
下肢静脈瘤は進行度によって治療方針が異なるため、弾性ストッキングのみでは十分な対応とならない場合もあります。
そのため、使用の可否や圧迫圧の選択については、医師による評価が必要です。
下肢静脈瘤が疑われる場合の受診・相談の目安
足のだるさや痛みなどの症状がある場合は、早めに医療機関で相談することが望まれます。
例えば、以下のような場合は受診を検討しましょう。
市販の着圧ソックスを使用しても症状が続く
むくみやだるさが徐々に強くなっている
皮膚の色調変化や硬さ、痛みがみられる
弾性ストッキングの使用について判断に迷う
弾性ストッキングは、医師の指示のもと適切に使用することで症状管理に役立つ場合があります。
不安がある場合は、医師の診察を受けることが重要です。
下肢静脈瘤なら下肢静脈瘤クリニックへご相談を
下肢静脈瘤クリニックでは、弾性ストッキングによる圧迫療法を含め、下肢静脈瘤の状態に応じた診療を行っています。
初診時には、足の状態や血流を評価し、必要に応じて弾性ストッキングの選択や使用方法についてご説明します。
このような方はご相談ください。
弾性ストッキングを使用してよいか、判断に迷っている方
市販の着圧ソックスで症状が続いている方 など
下肢静脈瘤によるむくみやだるさなどの症状がある場合、弾性ストッキングの適否は個々の状態によって異なります。
気になる症状がある場合は、医師の評価を受けることが大切です。
お気軽にご相談ください
弾性ストッキングに関するよくある質問
医療用と市販の弾性ストッキングの違いは何ですか?
医療用弾性ストッキングは、圧迫圧が管理されており、足首から上に向かって段階的に圧をかける設計となっています。主に、下肢静脈瘤などに対する圧迫療法として用いられます。 一方、市販の着圧ソックスは、軽度のむくみや疲労感の軽減を目的とした製品です。
下肢静脈瘤でも市販の着圧ソックスで代用できますか?
市販の着圧ソックスは、圧迫圧や設計が医療用とは異なるため、下肢静脈瘤に対する治療目的としては適さない可能性があります。 症状や状態に応じて、医師の診察のもと、適切な弾性ストッキングを選択することが重要です。
弾性ストッキングの使用中に注意することはありますか?
ストッキングのズレやシワ、食い込みがあると、適切な圧がかからず、皮膚トラブルや血流への影響が生じる可能性があります。 また、違和感や症状がある場合は、サイズや着用方法の見直しが必要なこともあるため、医療機関に相談することが大切です。
弾性ストッキングは夜間も着用が必要ですか?
弾性ストッキングの着用は一般的に、立位や座位で過ごす時間が長い、日中の着用が推奨されます。 ただし、治療内容や状態によっては、夜間の着用が指示される場合もあるため、医師の指示に従うことが重要です。
参考文献
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