監修医師
志村 一馬 医師
川越下肢静脈瘤膝関節クリニック 院長
当クリニックでは傷跡が目立ちにくい治療方法である、血管内焼灼術を健康保険適用でお受けいただくことができます。お気軽にご相談ください。
下肢静脈瘤による足のだるさやむくみがつらく、「マッサージで楽になるのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。
マッサージによって一時的に足のだるさやむくみが和らぐことはありますが、下肢静脈瘤そのものを治す効果はありません。
下肢静脈瘤は、静脈弁の機能が低下して血液が逆流する病気であり、一度壊れた弁がマッサージによって元に戻ることはないためです。
また、症状や皮膚の状態によっては、マッサージを避けた方がよいケースもあります。
この記事では、下肢静脈瘤のマッサージで期待できること、避けるべきケース、セルフケアで改善しない場合に検討したい治療についてわかりやすく解説します。
下肢静脈瘤にマッサージをしてもいい?
下肢静脈瘤がある場合でも、症状や状態によってはマッサージを行えることがあります。
ただし、マッサージは足のだるさやむくみなどを一時的に和らげるセルフケアの一つであり、下肢静脈瘤そのものを治すものではありません。
また、症状や皮膚の状態によっては、マッサージを避けた方がよいケースもあります。
安全にセルフケアを行うためには、ご自身の状態に合った方法を選ぶことが大切です。
ここでは、マッサージで期待できることと、注意が必要なケースについて解説します。
下肢静脈瘤とマッサージの関係
マッサージを行う場合は、症状を和らげることを目的としたセルフケアとして、医師の指示のもとで取り入れることが大切です。
マッサージで下肢静脈瘤が治るわけではない
下肢静脈瘤は、静脈弁の機能が低下して起こる構造的な疾患です。
一度壊れた静脈弁が、マッサージによって元の状態に戻ることはありません。
そのため、マッサージによって静脈弁の機能が回復したり、下肢静脈瘤そのものが治ったりすることはないのです。
マッサージ後に足が軽く感じることがありますが、それは血流が促され、だるさやむくみなどの症状が一時的に和らいでいる状態に過ぎません。
下肢静脈瘤でマッサージが禁忌となるケース
下肢静脈瘤があっても、すべての方にマッサージが禁止されるわけではありません。
しかし、症状や状態によっては、マッサージが禁忌となるケースがあります。
禁忌とは、「行わない方がよい」「避けるべき」と判断される状態のことです。
無理にマッサージを行うことで症状の悪化につながる可能性もあるため、ご自身で判断せず、医師の診察を受けたうえで適切なセルフケアを行うことが大切です。
ここでは、マッサージを避けるべき代表的なケースを紹介します。
1.血栓(深部静脈血栓症)が疑われる・指摘されている
深部静脈血栓症(DVT)は、足の深い静脈に血栓ができる病気です。
下肢静脈瘤とは異なる病気ですが、急な片脚の腫れや痛みなどがある場合には、鑑別が必要になることがあります。
深部静脈血栓症が疑われる場合は、自己判断でマッサージを行わず、速やかに医療機関を受診しましょう。
2.急な片脚の腫れ・痛み・熱感がある
片脚だけに急な腫れや痛み、熱っぽさなどの症状がみられる場合、静脈炎や血栓、感染症など、何らかの急性の炎症が起きている可能性があります。
このような症状がある場合は、下肢静脈瘤以外の病気が隠れている可能性もあります。
自己判断でマッサージを行わず、早めに医療機関を受診しましょう。
3.皮膚炎・潰瘍・出血・感染を伴っている
下肢静脈瘤に伴い、蜂窩織炎などの感染症や、潰瘍・出血がみられる場合は注意が必要です。
炎症や感染がある部位に刺激を与えると、状態の悪化や治癒が遅れる可能性が高まります。
特に、傷や潰瘍のある部分に、直接圧をかけるマッサージは避けましょう。
皮膚が弱い方やトラブルを起こしやすい方も、事前に医師へ相談してから判断してください。
4.医師の診断・評価を受けていない
下肢静脈瘤の重症度や症状に合ったセルフケアは、一人ひとり異なります。
見た目だけで判断することは難しいため、医師による診察や下肢静脈エコー検査で状態を確認したうえで、適切なセルフケアを行うことが大切です。
下肢静脈瘤のマッサージは自己判断が危険な理由
下肢静脈瘤は、見た目が似ていても重症度や病状は人によって異なります。
そのため、「少しむくむだけだから大丈夫」「痛みがないからマッサージしても平気」と自己判断することはおすすめできません。
安全にセルフケアを行うためには、まず下肢静脈エコーなどで状態を確認し、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。
ここでは、自己判断でマッサージを行うリスクについて解説します。
見た目だけでは状態を正しく判断できない
下肢静脈瘤は、血管の浮き出方だけで重症度を判断できる病気ではありません。
見た目は軽くても、静脈弁の逆流が進んでいることもあれば、反対に見た目以上に症状が軽いこともあります。
そのため、「見た目が軽いから大丈夫」と自己判断してマッサージを行うのではなく、まずは、下肢静脈エコー検査などで状態を確認することが大切です。
症状が軽くてもリスクを抱えているケースがある
下肢静脈瘤は、初期の段階では「少しだるい」「夕方にむくむ」といった軽い症状だけの場合も少なくありません。
症状が軽いからといって、ご自身でマッサージを始めるのではなく、まずは現在の状態を把握したうえで、セルフケアを行うことが大切です。
症状悪化や合併症につながる可能性がある
下肢静脈瘤の状態に合わない方法でマッサージを行うと、症状が悪化したり、皮膚トラブルなどにつながる可能性があります。
自己流のセルフケアを続けるのではなく、医師の診察を受けたうえで、ご自身に合った方法を選ぶことが重要です。
下肢静脈瘤でマッサージを行う場合の条件
下肢静脈瘤がある方のマッサージは、自己判断で行うのではなく、下肢静脈エコーなどで状態を確認し、医師が問題ないと判断した場合に限り、セルフケアの一つとして取り入れることが大切です。
ここでは、比較的マッサージを検討できるケースを紹介します。
血栓の指摘がなく、症状が軽度
深部静脈血栓症などが否定され、医師が問題ないと判断した場合は、症状緩和を目的として、やさしいマッサージを取り入れることがあります。
皮膚トラブルがなく、強い痛み・熱感がない
皮膚炎や潰瘍、出血などがなく、医師がセルフケアを行っても問題ないと判断した場合は、足のだるさやむくみの症状緩和を目的として取り入れることがあります。
医師からマッサージやセルフケアの指示を受けている
医師の診察や下肢静脈エコー検査などで状態を評価したうえで、マッサージやセルフケアを行っても問題ないと判断されている場合は、医師の指示に従ってマッサージを行うことが可能です。
その際も、強く押したり、痛みを感じるほどの刺激は避け、違和感がある場合はマッサージを中止しましょう。
マッサージは下肢静脈瘤を治すものではなく、あくまでも症状緩和を目的としたセルフケアです。
違和感や痛みがある場合は中止し、症状が続く場合は医師へ相談しましょう。
なお、日常的なケアを続けても症状が改善しない場合や、日常生活に支障がある場合は、早めに医療機関を受診し、治療について相談することが大切です。
下肢静脈瘤での正しいマッサージ方法と注意点
下肢静脈瘤がある方がマッサージを行う場合は、自己流ではなく、医師からセルフケアを行っても問題ないと判断されていることが前提です。
ここでは、安全に行うための基本的なポイントを紹介します。
マッサージを行う場合に意識したい3つのポイント
下肢静脈瘤に対するマッサージでは、「強く揉む」ことよりも、やさしく「血流をサポート」することが大切です。
以下の3つのポイントを意識しましょう。
1.強く押さない
強い圧をかけるマッサージは、血管や周囲の組織に負担をかけてしまいます。
指の腹や手のひらを使い、心地よいと感じる程度のやさしい圧で行いましょう。
2.心臓方向へやさしく
マッサージは、足首から膝、太ももへと、心臓の方向に向かって血流に沿って行うのが基本です。
特定の部位だけを集中的に押すのではなく、脚全体を均等になでるように行うと、血液の流れをサポートしやすくなります。
3.静脈瘤を直接刺激しない
浮き出ている静脈瘤を直接押したり、揉んだりするのはNGです。
また、マッサージ器や強い振動を与える機器を、自己判断で使用するのも避けましょう。
マッサージより優先すべき下肢静脈瘤のセルフケア
マッサージ以外にも、下肢静脈瘤による足のだるさやむくみを和らげるセルフケアがあります。
ただし、これらはいずれも症状を一時的に緩和することを目的としたものであり、静脈弁の機能を回復させたり、下肢静脈瘤そのものを治したりするものではありません。
ここでは、日常生活で取り入れやすいセルフケアを紹介します。
医療用弾性ストッキングの着用
医療用弾性ストッキングは、足首から太ももに向かって適度な圧をかけることで、血液の流れをサポートし、足のだるさやむくみなどの症状緩和が期待できる保存療法です。
医療用弾性ストッキングの使用は、医師の指示に従い、適切に行いましょう。
医療用弾性ストッキングについて、くわしく説明している記事があります。
あわせてご参照ください。
歩行・足上げなどの運動習慣
歩行や足上げなどの軽い運動は、ふくらはぎの筋肉を動かし、血液の流れをサポートするため、足のだるさやむくみの症状緩和が期待できます。
長時間同じ姿勢を避ける
長時間立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢は、下肢の静脈に血液がたまりやすくなります。
症状を和らげるためにも、こまめに姿勢を変えることを意識しましょう。
日常的なケアだけで改善しない場合は治療も選択肢です
弾性ストッキングや運動、マッサージなどの日常的なケアは、足のだるさやむくみなどの症状を和らげることがあります。
しかし、一度壊れた静脈弁が元に戻ることはなく、下肢静脈瘤そのものを改善することはできません。
症状が続く場合や、日常生活に支障を感じている場合は、セルフケアだけで様子を見るのではなく、治療という選択肢について専門医へ相談してみましょう。
セルフケアで改善しない場合はエコー検査で確認を
セルフケアを続けても症状が改善しない場合は、「静脈瘤がどの程度進行しているのか」「他の病気が影響していないか」などを確認することが大切です。
下肢静脈エコー検査では、静脈の逆流の有無や程度、血液の流れの状態などを詳しく確認できます。
見た目だけでは分からない重症度も評価できるため、現在の状態に合った治療やセルフケアを選択するための重要な検査です。
検査結果をもとに、セルフケアを継続するのか、治療を検討した方がよいのかを判断できます。
下肢静脈瘤の治療は15〜20分程度で終了する日帰り治療が可能なケースもあります。
セルフケアだけでよいのか迷っている方は、一度専門医へ相談し、ご自身に合った治療方法があるか確認してみましょう。
お気軽にご相談ください
下肢静脈瘤のマッサージに関するよくある質問
下肢静脈瘤があってもマッサージをしてもいいですか?
足のだるさやむくみ、痛みがある場合は、マッサージをすると症状が緩和される場合があります。しかし、自己判断のマッサージは症状を悪化させる可能性があるため、医師の指示に従って、適切なマッサージを行いましょう。
下肢静脈瘤でむくみが強いときは、マッサージしたら楽になりますか?
一時的に楽に感じることはありますが、下肢静脈瘤そのものがマッサージで改善することはありません。むくみやだるさが続く場合は、マッサージよりも弾性ストッキングの着用や下肢静脈エコーによる評価が必要です。
下肢静脈瘤のマッサージは、どんな人ならしてもいいのですか?
「血栓がないこと」「皮膚トラブルがないこと」などを医師が確認している場合は、マッサージができる場合があります。その場合でも強く押さないことや静脈瘤部分を避ける、痛みや違和感があればすぐに中断することが大切です。